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1866(慶応2)年、岡山県出身の修験者、定山坊(じょうざんぼう)(別名・美泉定山)が托鉢(たくはつ)で糊口(ここう)をしのぎながら切り開いたという定山渓温泉。その73年の生涯を宿泊客に語り継いできたのが「ふる川」の支配人、阿部通彦さん(72)だ。2004年に始めた夜話は530回を超えた。「アイヌの青年から定山渓に湧く温泉の効能を教わった定山坊が、病んでいる人のためと孤軍奮闘し、宿場を開いた」のが今につながる。「病弱だった2人の妹と岡山県の湯郷(ゆのごう)温泉に通った原体験が定山坊を突き動かしたのだろう」と語る。 創業45年のふる川の露天風呂は、ひなびた味わいが魅力だ。定山坊が湯守をした湯治場(とうじば)の風情を残す「ゆ瞑(め)み露天風呂」は古木や裸電球を用いた趣のある風呂につかり、心静かに自らを見つめるひとときを過ごしてほしいとの願いがこもる。定山渓の四季折々の景色を望む展望浴場も当時をしのばせる古式ゆかしさだ。源泉掛け流しのナトリウム塩化物泉が、訪れた人の疲れをほぐし、体を芯から温めてくれる。 52室ある部屋はいずれも和室を基調とした上品で落ち着きのあるしつらえ。九州の古民家と小樽の石蔵のたたずまいを併せ持った休憩所や山小屋を模したラウンジは、どこか懐かしいふるさとの面影だ。いろりを囲み、道産食材を炭火で味わうのも楽しみのひとつ。文化の香り高い催しも評判で、前出の夜話を毎週金曜の21時に行っているほか、道内作家の美術作品や古民具などを展示するギャラリーも。月2回ほど行っている札幌交響楽団員らプロの音楽家による無料コンサートも人気で「東京のサントリーホール通いからくら替えした」と話す常連客もいるほどだ。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇所在地 札幌市南区定山渓温泉西4 ☎011−598−2345 無料送迎バスあり(要予約) 1泊2食1人(1室2人)の基本宿泊料は、ぬくもり館=1万4200円、ふるさと館=1万9800円。各種プランも。日帰り入浴可。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇毎日フレンド会員特典 基本宿泊料から10%引き(要予約、到着時に会員証提示)
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