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札幌市のシンボル「泉の像」や戦没学生の記念像「わだつみのこえ」などの作品で知られ、戦後を代表する公共彫刻の第一人者、本郷新(1905〜1980年)。本郷の死の翌年にオープンした彫刻美術館は、別荘のアトリエを改装し、本郷の作品や制作道具などを展示する記念館と本館からなり、彫刻664点、絵画など約1200点を所蔵する。 本館では7月11日から9月27日まで特別展「谷口顕一郎展 凹(へこ)みスタディ―札幌―」を催す。若手彫刻家の育成を願う本郷の遺志を受け、昨年新設された「本郷新記念札幌彫刻賞」の初の受賞者となった札幌市出身の彫刻家、谷口顕一郎さん(38)の受賞作「凹みスタディ―琴似川 北12条西20丁目」や新作など計34点を展示する。 谷口さんの彫刻は、路面や壁面にできた亀裂や破損箇所(凹み)がモチーフ。凹みを透明のシートで覆い、輪郭をペンでなぞったものをプラスチックの板に写し取って切り抜く。切り抜いた板を任意の部分で切り離し、ちょうつがいを付け折り畳んで形作る。同じ凹みからさまざまな造形が生まれる。「古い、汚いといった印象の凹みにも形の斬新さや愛嬌(あいきょう)、圧倒的な力を感じる」と谷口さん。「ひと畳みごとに形の美しさや個性を見いだす瞬間が楽しい」と話す。 同展では「岡崎文吉のための凹みスタディ」と題した横幅5メートル1センチの大作を天井からつるす。治水技術者、岡崎文吉が開発した治水用のブロックが残る茨戸川護岸の凹みを写し取った作品だ。 谷口さんは、北海道教育大学を2000年に卒業。05年、ドイツに渡航後、欧州各地のギャラリーや展覧会で頭角を現した。11年には、オランダ司法省徴収局のオブジェにも採用された。00年から40余りの国で387の凹みを採取、現在はベルリンと札幌を拠点に制作を行う。山口県宇部市で10月開催の歴史ある現代彫刻展「UBEビエンナーレ」にも選出された注目株だ。
……………………………………………………………………………………………………… ◇所在地 札幌市中央区宮の森4の12 ☎011−642−5709 10〜17時、月曜休館(7月20日・9月21日開館、7月21日・9月24日休館) 一般500円▽65歳以上400円▽高大生300円▽中学生以下無料 ※7月11日は谷口さんのトークイベント、同24日には谷口さんと制作工場を巡るツアーも ……………………………………………………………………………………………………… ◇毎日フレンド会員特典 毎日フレンド会員は、会員証提示でグループ全員、団体割引料金に(400円▽65歳以上320円▽高大生250円※展覧会により異なります)
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