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まちの開業医院さながらのたたずまいがユニークな時計の修理工房だ。種類、メーカー、年代を問わず、どのような時計の疾病も診察のうえ、治療方針を立ててくれる。備え付けの「カルテ」には、脳神経外科=機械式時計の分解・修理▽心臓血管外科=電池式時計の分解・修理▽整形外科=リュウズ・ボタン等の修理取り換え――など11の診療科目ごとに修理内容が記され、入手困難な部品を手作りすることも。 受付奥の診察室で診断を行うのが、ルーペに白衣姿の院長、柴田紘典さん(76)だ。半世紀あまりを時計修理にささげ、時計修理職人の最高峰とされる公認高級時計師(CMW)の資格を持つ。工房を病院になぞらえたのは、乳幼児期の解熱剤注射で左足の自由が奪われ、20代で遭遇した交通事故の輸血で肝炎ウイルスに感染、肝がんを発症するなど満身創痍(そうい)の“体の部品を一つずつ修復”してきた経験による。札幌市内の量販店で開業したのが20年前。10年後に現在の住所に工房を移し、札幌の大丸藤井セントラル、東京の町田と池袋の東急ハンズにも工房を持つ。年1度は自ら車を操って東京へ出張、大型のアンティーク置き時計の心臓部を持ち帰りオーバーホールも行う。 柴田さんによれば、手巻きや自動巻きの機械式腕時計は1970年代にクオーツ式に市場を奪われたが、10年後にスイスで、30年後には日本で生産を再開した。今は市場も回復し、技術者も戻りつつあるという。本院工房でも2人の若手技術者が、「腕時計を落としてガラスを割った」「急に動かなくなった」などと切れ目なく訪れる急患の対応に追われていた。「高級品でも部品が多いのはだめ。シンプルな設計ほど美しく、寿命も長い」と柴田さんが見せてくれたのが今治療中の、鐘で時を知らせる仕組みの150年前の懐中時計とスイス・エタ社製の腕時計のムーブメントだった。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇所在地 札幌市中央区南9西12−1−30☎011−518−0117 10〜19時。月曜休診。電池交換1000円〜▽ガラス交換6000円〜▽オーバーホール8000円〜(各税別)ほか。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇毎日フレンド会員特典 会員証、指定割引券、携帯クーポン提示で本院工房のみ修理5%引き、電池交換10%引き
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