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「はい銀太くん目覚めてね。出発しまーす」。チリンチリンと鈴の音を響かせ、2階建て幌(ほろ)馬車がゆっくりと動き出した。 1978年創業、観光客や市民にもなじみの札幌市のシンボルを引くのは4代目「銀太2号」だ。体重1トン超の大型馬がそりを引いて競うばんえい競馬の出場馬だったが、優しい性格が災いし、負け続きでクビになったところを創業者の土屋光雄さんに引き取られた。4歳のデビュー当時は暗灰色だった毛色も芦毛(あしげ)特有の経年変化で今や白馬に。はみの脇からちょろっと舌をのぞかせているのがチャームポイントだ。首に下げたクマよけの鈴は開拓時代、伐採した木を運び、木の根を引き抜いて活躍した農耕馬の名残だそう。 幌馬車は大通公園4丁目を出発し、時計台、北海道旧本庁舎「赤れんが」で撮影タイムを挟みながら50分かけて一周する。2階の高さから正面に望む赤れんが庁舎など市民でもなかなか味わえない眺めだ。 2007年から御者を務める渡部一美さん(50)は、北広島市で営んでいたラーメン店が立ち退きにあい、通いの客だった土屋さんにスカウトされた。5年だけならと御者修業を開始。心を開いてくれない銀太に途方にくれた時期もあったが、09年に土屋さんが急逝したことで後継を決意した。「物おじしない銀太が専務で自分は平(ひら)」と笑うが、手綱さばきも堂々たるもの。得意の英語で海外客との会話もお手の物だ。 観光幌馬車は、自動車整備・販売業や騎手の乗馬ブーツなどの製造業を営んできた土屋さんの宿願だった。妻で現社長の豊子さん(76)は「夫はワンマン社長でしたが、幌馬車を模型作りから始め、自動車整備の技術をウインカー、サイドブレーキ、スプリングなどに生かし、夢を実現しました。私の革のベストも手作りなんですよ」と誇らしげだ。 ◇所在地 【乗り場】札幌市中央区大通西4(地下鉄大通駅5番出口)電話011- 512- 9377 4月末〜11月初旬。水曜休み(雨天も)。1階席1800(2階席2200)円、小学生1000(同1200)円、3歳以上500(同600)円。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇毎日フレンド会員特典 毎日フレンド会員は、会員証提示で本人と家族全員、大人200円引き、小学生〜3歳100円引き
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